月は僕の味方
*contents | Home | Blog | information | Profile | Photo | imagination |
| Cd-data | Mailform | Past | Link | contents*
  

過去日記の園

2003年 2月へ戻る

闘病日記。



2月×日
入院初日。
二子玉川にある「日産玉川病院」へ。
西棟316号室。6人部屋。
ここは「気胸」センターなる専門の科が存在する気胸に関しては日本一の病院である。
丘の上に建っているので病室からの眺めは格別。
二子の高島屋。多摩川。そして天気の良い日は富士山も見えるのだ。
栗原先生(ホントお世話になりました)から手術についての説明を詳しく伺う。
「気胸」についてはココの「気胸研究センター」のとこを読んで勉強して!

さて手術は2日後。
入院する事自体初めてだし(この前3日間入院はしたけれど)、その上全身麻酔の手術だなんてちょっと怖かったが、逆に楽しんでいこうと自分に暗示をかける。
ここは大きな病院なので設備も整っているし、環境も良いし、趣きもあるしで気に入った。
病室に入ったとたん若者二人がノートパソコンをいじっていたりして、こういう時こそのノートパソコンだよな〜などと思ったりした。
まあ、本を読むよ僕は。

屋上に登る。
さぞかし眺めが良いだろうと思っていたが、柵だらけで眺めのいい方角には行けなくなっていた。残念。
そうだよな〜こんな景色よかったら飛び下りたくなっちゃうもんね。
血を抜かれ、明日の朝までの小水を溜めて行く。
いやさ驚いたよ。人間は一日に凄い量のおしっこをしていたのだね。

一日目の夜。
なかなか寝つけない。
と思ったら熱が出てしまった。
看護婦さんに水枕を作って貰う。まだ手術も何もしてないってのに。
夜中は腰痛も出て起きてしまう。
ベットがちょっと固いのだ。
久しぶりCDをじっくり聴く。
ビートルズ「マジカルミステリーツアー」。
バートバカラック「マスターピースvol.1」。


2月×日
入院2日目。
朝6時に起こされる。
7時半朝食。かなり質素。パン。
明日手術なので、毛を剃られる。
右胸の毛。右のわき毛。右足のももの毛も。
何故ももの毛?
知らぬ間に外は雨から雪に変わっている。
昼過ぎシャワーを浴びる。
シャワーは朝9時から昼3時迄で、30分ごとでボードに書いて予約するのだ。

読書。
「ハリウッドの謎」木谷高康。
「ウッディアレンのすべて」井上一馬。
「すべての男は消耗品であるvol.6」村上龍。
「プロレスがわかるのはオレだけだ」ターザン山本。
文芸春秋に載ってた百二十八回芥川賞受賞作品「しょっぱいドライブ」にはがっかりだ。

夕方になって友人から花が届く。
ベットの廻りが、一気にいい匂いに包まれてちょっと恥ずかしい。
チューリップ。フリージア。スイートピー。ラナンキュラス!?。グリーンピンポン。などなど。
思ってもみなかったのでとても嬉しい。

夜8時。面会時間終了にはムーディーな「オーバー・ザ・レイボー」がかかる。
なんて ロマンチックな病院。
下剤。胃薬。睡眠誘導剤。
今夜9時から明日の手術まで食べ物、飲み物一切口に入れてはならぬとの事。ひい。
「Bireli Swing 81」。
「アンプラグド」エリッククラプトン。


2月×日
入院3日目。手術当日。
手術着に着替える。
下にパンツを履いていると「何パンツ履いんですか〜」と看護婦さん。
なにやら白いふんどしのような紙(何か名前があるはずですが、判りませ〜ん)を下半身に身につけ手術台に乗る。
足にも包帯をぐるぐる巻きつけられる。これはどうしてなのか最後迄わからなかった。
なにもかも初めてずくしだ。
ドキドキする。
初めの注射でちょっと意識がトロ〜ンとしてくる。
鼻から管を通されて喉の奥へ。
これがちょっとオエッときた。
さ〜て手術室に入った。
もう一本注射を打たれる。
多分、先生が「1、2、3、...」と数を数えていたようだったが、朦朧としていたのでというか2本目の注射であっと言う間に全ての意識は吸い込まれるように落ちて行った。


・・・。


・・・・。


目が醒めるとそこはもう手術室では無く。
かといって自分の病室でもなく。
手術を終えた人の集まるナースステーションの隣の病室に居た。
手術からどれくらい時間がたったのだろう?
「3日間眠り続けてたんですよ」と言われたら信じたかもしれない。
なんだか凄い時間眠っていたような気分だった。
深〜い森から抜け出したような。
しかし実際は手術から3時間もたっていなかった。
右胸がキリリと痛む。
自分がどこに存在してるのか暫くつかめない... 。
カッコ良くいうとそんな気分。
左手は点滴からの管が。
右胸からは管が出ていてベットの横の機械に繋がっている。
そして... 。
尿道にも管が。
体中管だらけだ。

身動きすると激しい痛みが走る。
うう。
頑張ってじっとしているのだが、動かないで居るというのは実に苦しい事で。
額は冷汗でびっしょりだった。
声も普通に出そうとすると響いて痛いので囁くようにしか話せない。
今日はホント忍耐の日だ。
そのまま夜になったが痛みで眠れやしない。
地獄だ〜。

まだ麻酔の影響があるのか、ちょこっと眠っては色んな荒唐無稽な嫌な夢を見る。
内容はほとんど覚えてないが、色んな夢が凄いリアルな感じで次々だったので、それにもほとほと疲れ果てた。
病室の廻りの人達も声をあげたり、うーうー唸ったりしている。
唸りながら眠っているものもいる。
皆手術おわったばかりで辛いのだ、痛いのだ。
その病室に夜緊急で入ってきた90過ぎのおばあさん(自分で言っていた)。
「体中が痛いよ〜いたいよ〜」と叫んでいる。
看護婦が来ないので、壁を叩いたり、終いには仕切りになっているカーテンを引きちぎったりして暴れるおばあさん。
なんだかこの病室は凄い事になっている。
闘うモノばかりの戦場だ。
地獄絵図。
看護婦さんも眠れやしない。
僕は痛みに耐えながら、この病室を舞台にしたら面白いかな〜と思った。が。
いや、逆にナースステーションを舞台にして、袖をこの病室にしたほうがより面白いか。
袖から唸り声が聞こえて来るっていう方が。などと思ったり、しかし痛かったり。

看護婦さんや先生に「比留間さん!」と呼ばれると、健康時代の「カラフルメリィでオハヨ」を思い出す。芝居中、実名で呼ばれてたからなあ。
というか普段本名で呼ばれる事がほとんど無いので新鮮なのだった。
それにしても今日はホントにガマンの日。
精神的にはかなり衰弱した。
今襲われたらなんの抵抗も出来ない。


2月×日
入院4日目。手術後2日目。
そんなこんなであまり眠れなかったが、朝になると少しずつ痛みも減った。
看護婦さんに尿道に入った管を抜かれた。スルスル。10センチは入ってたか!?
すでに恥ずかしいとかいう気持ちは無かった。
ここまで来たら、もう何をされても大丈夫。
抜かれる時「いたたた...」と声が漏れてしまった。
ゆっくりパンツを履き。
寝巻きに着替えて自分の病室へ。
肺に入っている管はそのままなので、管に繋がった機械をがらがらと引きずりながら。

しかし人間とは素晴らしい。
どんどんと回復していくのだった。
朝にはお粥を食べ。昼からは常食を食べた。食欲もある。
まだ傷と管が入っている胸の所は痛むが。

夕方眠っていると、犬山が面会に来た。
今日は「ドントラ」の記者会見をやって来たのだという。
僕も元気だったら出る筈だったのに。
犬山は実に嬉しいものを貸してくれた。
ポータブルのノート型DVDプレーヤーだ。
ちょっと病院ライフが楽しくなりそうだ。
しかしあまりソフトが無いらしく、
「犬山が撮り溜めた歌番組〜あややからポールアンカまで〜」
「イウォークアドベンチャー」
「ボウリング ジャパンカップ94」
の3枚だけだった。
「これしかないのじゃ〜」と言っていたがそれなりに楽しむ。
ありがと。


2月×日
入院5日目。手術後3日目。
かなり入院生活に慣れて来た。
一日の流れがかなり体に入って来た。
午前中に来る掃除のおじさんが、寝てる時に来たりするとうるさくてちょっとイライラしたりとかね。
掃除機と濡れ葺きとで2回来るのよね。
そんな毎日やらなくても〜とも思うんだが、向こうも仕事だ。仕方ない。
でも患者さん達にちょっと疎ましく思われているのは否めない。

肺から管はまだ繋がっていて、その先の機械も依然ついている。
出歩く時は、荷物カゴをガラガラさせるかのように機械を持ち歩く。
機械と体、一心同体。テクノだ。

今日は暖かく天気がいい。
友人の美容師が見舞いに来てくれた。
「退屈でしょ。入院してる時に読むならこれだと思って」
と差し入れてくれたのは飯島愛の「プラトニックセックス」だった。
入れ違いで高校時代からの友人も来た。
彼女は花を贈ってくれた人だ。
夕方になってナイロン陣(長田、三宅、リエちゃん)。
そのあとには「1989」で一緒だった、吉本さんと乙井さんまで見舞いに。
大人数になったので、面会室で話す。
来た人に手術の話とか同じ内容を繰り返す(笑)
それにしてもこの病院は陽が落ちると一気に暗くなる。ドイツみたいだ。
なので、まだ5時過ぎだというのに深夜の装いだ。
リエちゃんは「眠くなってきちゃった〜」とポツリ。
三宅は病院食の事ばかりに興味を持ち、6時に夕食が来たのをわざわざ病室まで見に来て一言「うまそ〜!」。
なんだか一日のうちに色んな人が来てくれてホント嬉しかった。
長田からは犬山との連係プレーでDVDの映画ソフトを何本も持って来てくれた。
リエちゃんには、よしもとばななの新刊「ハゴロモ」を。
吉本さんからは、ハードカバーの「藤子・F・不二雄のSF短編集」を。
乙井さんからは、何故か苺大福を頂いた。
持って来た本も全部読み尽くしていたので、差し入れ群はホント有り難かった。

夜は「プラトニックセックス」を読破(笑)
長田に借りた「裸のガン」のDVDとか見たりで退屈しなかった。
しかし深夜になってもなかなか眠れない。
ベットが固いのか腰がヒリヒリする。
傷が痛いので寝返りもあまり打てないし。
あと、向かいのおじさんのイビキが凄くて眠れない。


2月×日
入院6日目。手術後4日目。
朝方やっと眠れたと思った矢先に起こされた。
ぼーっとしたまま朝食を。
今日は胸からの管に繋がっている機械をはずした。
一歩回復。これで身軽に移動出来る。
まあ動くとまだ少し息苦しく傷口は痛むが、多少の痛みにはもう慣れっこになって来た。

僕の病室の人たちの顔ぶれがいつのまにかガラリと変わっている。
入院6日目にしてこの部屋の古株だ。
この病室は回転率が早いみたいだ。
ナースステーションに退院の日取りと入院費などについて訪ねる。
病室にそれを伝えに来てくれた看護婦さんに「比留間さんて、あのみのすけさんなんですか?」と質問される。
昨日見舞いに来た友人の美容師が、受け付けで面会人のところに「みのすけ」と書いたのが原因らしい。
その上看護婦さんの中で僕のHPを覗いていた人が居たらしい。世の中ってのは狭い。
これじゃ病院の悪口も書けないね。
いやいや素晴らしい病院なんで悪口もないけど。
看護婦さんは皆天使に見えるしね。
人数も割りに多く。若い。そして皆美人。
その上見習いの学生さんらしき女の子達も一緒に廻ってきたりするのでいや〜女の園。
しかしほとんどの看護婦さんが大きなマスクをはずさない為、素顔が拝めないのが残念。
そんな中、自称大木ボンド似の看護婦さんにはホントお世話になった(彼女だけは何故かマスクをしていない)。
彼女には尿道の管まで抜いて頂いた訳で、もう隠すものは何もありませんって感じだ。

夕方になって大堀浩一、宇宙レコードの小林顕作が来る。
差し入れはイチゴ。
3人で、面会室で練乳つけてほうばる。小さな幸せ。
その後には清水宏も来た。
「今日は知り合いのライブに出るから少ししか居られない」と言いながら、シンバル持参の鞄を片手に相変わらずテンションは高かった。
清水宏も正月から肝炎で3週間近く入院してたのだ。
正月に彼のお見舞いに行った時は、まさか自分が見舞われる立場になるだなんて思いもよらなかった。
人生とはわからんものだ。
宏の差し入れは藤原周平「たそがれ清兵衛」。
暫くして藤田秀世氏も。
旅行帰りだと言う。「上州みそだれ餅」の差し入れ。
それにしても藤田君はホント旅行ばかりしているなあ。

夜は「レザボアドックス」のDVDとか見る。
手術したあとに見るもんじゃないね。ティムロス痛そう。
深夜はまたもやイビキで眠れなかった。
どうやら隣の若者も眠れないらしくごそごそしている。
見回りに来た看護婦さんが「流石にコレじゃ眠れないでしょ」と睡眠薬をくれた。
結構どこでも眠れる僕なのだが、地鳴りのように低音で響く向いのおじさんのイビキにはかなわないのだった。
睡眠薬もいいけどビールとか飲めれば眠れるのにな〜とも思った。


2月×日
入院7日目。手術後5日目。
睡眠薬のおかげで眠れたが、朝6時には起こされてしまうので朝は朦朧としていた。
入院してんのに寝不足ってどういうこっちゃと思いながら、今日は胸からの管を抜いた。
胸の中に20センチは入っていただろろうか。
抜く時はなんだかムズくすぐったい感覚だった。
その穴をホッチキスで止める。痛。
体から機械が全て取り除かれ、なんだか本来の自分に戻れたような気が。

今日は僕の病室の他の2人が手術だ。
隣の若者は気胸の手術、もう一人のおじいさんは何やら違う手術。
あわただしく手術の準備がはじめられている。
いや〜もう一回手術しろって言われたらどっかに逃げるな〜。
手術自体は覚えてないからいいけど、術後のイタミはもう思い出したくない位辛かったもの。。。
忘れっぽい僕でもあのイタミはちょっとやそっとじゃ忘れない。

先生に「明日の朝レントゲンを撮って大丈夫だったら退院ですよ」と言われる。
とても嬉しかったが、どうせだったらもう2、3日いてもいいかなともちょっと思った。
ちゃんと眠れればの話だけど。
だって家に居たらこんなに集中して本読んだり、もの考えたりしないもの。
何も無いっていいなあ。
人間は何もなくてもその中で何かしらの楽しみや何かを見つけていく動物なのだ。
イラナイモノガオオスギル。

昼過ぎに多数の面会人。
皆「1989」の面々だ。
野村佑香ちゃん、加藤啓、成ちゃん、小林高鹿、本谷有希子。あとナイロン新人の柚木もひょっこり。
沢山の果物を持って来てくれたので、皆で喰べまくる。
面会室はかなりうるさかったかも。
本谷は面会室の椅子を勝手に動かして看護婦さんに怒られる始末。
高鹿から「こち亀」の65巻と133巻の差し入れ。
こち亀の最近の絵が手抜きになっているので確認して楽しんで欲しいとの意向。
133巻の手抜きと思われるページには付箋までしてあった(笑)
啓からはプレイモービルスペシャルというちっちちゃなおもちゃを貰う。
夜になってムニエルの村上君、政岡泰志、池谷のぶえさんらが。
池谷さんからはイチゴを、泰志からは「浦安鉄筋家族」「どらえもん」などの漫画を。
みんなの差し入れに嬉しい悲鳴だ。
夜は「オールザットジャズ」のDVDを。おいおいこれも病院ものだよ。
今日は面会者も多く少し疲れたが、逆にすぐにぐっすり眠れた。


2月×日
入院8日目。手術後6日目。退院当日。
昨日は早く眠れたので朝6時には目が醒める。
食事を終え、レントゲンを撮る。
先生来る。退院決定!やたっ!
傷口の抜糸を来週しましょうという事に。
久々シャワーを浴びる。ちょっと傷口がしみるが気持ちいい。
咳をしたり大笑いしてりするとまだ少し痛むが、6日前に体を切ったんだからそりゃ痛いのも当然か。
「退院しても1、2週間は過度な運動をしないように」
という事で退院となった。

退院。
退院。
嬉しい。
しかしなんかちょっと寂しかったりもする。
たった一週間ではあったが、やっと病院に慣れはじめたばかりというか。
結構充実して本やら漫画やら読めたし、病院生活っていう隔離された世界に楽しみを覚えはじめた矢先だったもので。
看護婦さん達とももう少し居たら仲良くなれたかな〜なんて思ったり。
マネージャーの太田さんに車で自分の家に送って貰う。
戻って来て一憩。
シャバに出れて嬉しい〜っつう気持ちも山々だったが、意外にも僕が考えているのは、病院の事だった。

今夜、あの病院のあの病室の僕のベットには。
新しい患者さんがもう眠っていて。
看護婦さんは今夜も「眠れてる?」と見回りに来るだろう。
何故なら僕の前のベットのおじさんのイビキは今夜もものすごいだろうから。
自称大木ボンド似の看護婦さんは今日も夜勤なのだろうか?
知らない所で知らない毎日が繰り返されているのだ。
病院。
不思議な体験をさせて貰った。

しかし待ちに待った一週間ぶりのビールが飲み切れない。
350ml缶一本が。
その上あまり美味しく無い。
あんなに飲みたかったのに。
それと筋肉が落ちてるね。足とか腰とかの。その上体中筋肉痛。
家に帰って来てみて、少しずつ回復してはいるものの、まだ前の通りじゃない自分の状態に気付かされる。
退院したが、暫くは大人しくしていよう。
と思った。

さてと、皆から貰った差し入れをかたずけていこう。
まずは「浦安鉄筋家族」からでも・・・。





2003年 2月へ戻る


*contents | Home | Blog | information | Profile | Photo | imagination | Cd-data | Mailform | Past | Link | contents*


info@minosk.com
Copyright (c) 2006 minosk.com, All rights reserved.
巳