月は僕の味方
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過去日記の園

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2002年6月のころ



6月×日

謎の留守電。

稽古終わって家に帰ったら、家の留守電が入っている。
再生する。
フランス語だ。
多分フランス人であろう。
内容は良く判らない。
キツネにつままれたような気になった。
少なくとも家に電話してくるようなフランス人の知り合いはいないし。
誰なんだ?
悪戯か?
謎の留守電で今日は眠れないっす。



6月×日

今さら乍ら椎名林檎論。

芝居とは懸け離れた話で申しわけない。
椎名林檎のカバーの新譜を聴いた。
はじめは、ついに「カバーに逃げたか」と思った。
しかしそこは確信犯。
ジャニスイアンの「love is blind」とかやられちゃうともう参ったの一言だ。
ジャニスなんてのは、僕の十才上の姉の世代がタイムリーであった。
僕が小学生の頃、姉の部屋ではジャニスのアナログレコードが毎日のように流れていた。
私小説が世界をかえるかもみたいな、フォークソングの先駆けだ。
確信した。
椎名林檎は、ジャニスだ。そして浅川マキなのかもしれないと。
脅威だ。
だからこそ、30過ぎのサブカルおっさん達が椎名林檎が気になって仕方なくなってしまうのではないだろうか。と。



6月×日

僕が無心になるまで。

本番4日前。
昼に通しをして夕方で稽古は終わった。
暫く振りで、早く帰れる。そう思った矢先に事件は起こったのだった。

ここのところ僕は稽古場までバイクで通っていた。
帰り道、気付くと胸のポケットに入れておいた携帯電話が無い。
気付いたのは稽古場から30分ほど走った辺りだった。
落としたか!?
しかしまだ早い時間だ。気力もある。
来た道を調べよう。見つかるに違い無い。
僕はそう信じて来た道をゆっくり引き返した。
5分程戻った辺りだろうか。いきなりバイクがプスン。
エンジンが止まった。
ガス欠ではない。
そういえば最近ちょいと変な音がしてたな〜と思って居た矢先の顛末だった。
もううんともすんとも言わないので、路肩に止める。
エンジンはかかるが車輪が全く動かない状態だ。引いても歩けない。
悪い事は重なる。
バイクの事はひとまず忘れる事にした。
今は携帯に集中しよう。それだけに。

公衆電話から自分の携帯に電話してみる。
すぐに留守電になる。今頃車に引かれてバラバラになったか!?
一体どこにあるのだ?
僕は来た道をとぼとぼと歩き戻りはじめていた。
交通量の激しい道(靖国通り)をじっと見つめながら。

とぼとぼ。
とぼとぼ。

1時間30分僕は歩き続け、稽古場まで戻った。
しかし見つからなかった。
途方に暮れた。しかしなんだか可笑しかった。
稽古場の近くの駅から電車に乗り、バイクを置いた地点の駅まで戻った。
いつのまにか夜11時を廻っていた。
もう一度バイクが動かないのを確認して、その駅の交番に駆け込んだ。
「携帯電話を紛失してしまって…」
対応してくれた警官はなまりがあったが、その優しい口調に少し救われた。
書類を書き込む。
まあ殆ど出ては来ないだろうと思いながら交番をあとに。
バイクは乗り捨てていくことにした。
電車も無くなるので、仕方なくその日は大人しく帰った。

次の日。
稽古は1時からだった。
十分に時間はある。まだあきらめるものか。
朝の6時過ぎに何故か目覚めた僕は、朝のラッシュに揉まれてバイクを置いた駅まで。
降り立つと僕は昨日探した道とは逆に歩き出した(つまりバイクが停まる寸前まで戻って来た道)。
朝の暑い日ざしがあざ笑う。

とぼとぼ。
とぼとぼ。

1時間。
足は昨日の今日でパンパンになっていた。
しかし無い。
無かった。

しか〜〜〜〜〜〜〜し。
なんだか晴れやかな気持ちになって居たのだった。
楽しくなっていた。

まだ街は朝の9時。まだ動きだしては居なかった。
こんな時間に何故ここにいるんだろう?
ふと、とても不思議な気持ちに包まれた。
10時。銀行でお金を下ろした僕は、無心に。
そしてとても静かな気持ちで携帯を買い替えた。



6月×日

本多仕込み日。

さてさて今日から本多劇場入りだ。
朝9時。劇団員も客演も関係ない。全員で仕込み。
ま、といっても叩きの出来ない僕などは、搬入のみで今日の統べてが終わったと言っても過言ではなかったが。
思った以上の空間。
本多劇場でないような、高さを使った空間を創りだした。
まさに檻の中状態だ。



6月×日

仕込み2日目。

男だらけの芝居。男だらけの楽屋。
僕の隣の席はキャラメルの大内君。待ち時間はノートパソコンで創造中。
隣の楽屋から聞こえるはウクレレの音。大谷さんが弾いている。涼し気だ。
足を引きずりながら(稽古中に膝を負傷した)傘を杖代わりに楽屋入りの保村君。
夜は通し。
観た方はわかっていただけると思うが、一回通すと色々大変な事になる芝居。
怪我だけには気をつけよう。



6月×日

初日!初日!初日!

僕は初日って言葉が大好きだ。
なぜならどんな芝居も初日は一回しかないから。
しかし僕はかなり浮き足立っていた。
緊張感高まる中、本番がはじまる。
一気に駆け抜ける。
終わって楽屋に戻る。
皆なにかの糸がほどけたようにニヤニヤしている。
ロビーで初日乾杯。
今回の作家の鐘下さん、ケラも駆け付けてくれた。
ケラからの感想を請う。
とても面白かったと言ってくれたのでホッとする。

実家から電話。
何かと思ったら。
なくした携帯電話が届けられたと、警察からハガキが届いたらしい。
嬉しいんだけど、もうどーでもいいって気も(笑)



6月×日

最悪!

今日の芝居はかなり揺れた。
昨日の今日で全然違う芝居になった。
思うに。
今回の芝居ほど、皆の気持ちが揺れ動く、毎日違うバトルになる芝居もめずらしい。
今日はフローズンチーム(犬山以外)が来てくれた。
飲み屋でダメだしを請う。

皆さ〜ん!
芝居は16日までです!
来て下さい。チケットまだまだ残ってま〜す。
サッカーに負けるものか!



6月×日

日曜マチネ。

今日はいい空気感で芝居が出来た。
毎日違う芝居になる。
これは面白いことでもあるが、怖いところでもある。
お客さんは一回しか観に来ない。
こんなに揺れていてはプロ失格。
夜は大谷亮介家でサッカー観戦。
なんだかんだで無責任に盛り上がる。



6月×日

届けられた携帯を警察署に取りに。

同じ携帯が2個。色違い。トホホ。意味無し。
悔しさを紛らわそうと「少林サッカー」を観て気分転換。
バカバカしくて最高。
芝居の方は日に日に変化している。



6月×日

関係者一番多い日。

補助席まで出る。何故なら割り引きの日だからだ。
¥1000違うと客の入りも違う。
今日もなにかしら空気は違った。



6月×日

今日は閑古鳥。

夜は飲んだ勢いでまた大谷家に泊まる。
塩野谷さん、魅に来てくれた大久保了さんなど男ばかりでドカ寝。



6月×日

8月にラフォーレでやる

「空飛ぶ雲の上団子郎一座」の製作発表(記者会見)に参加。
テレビ東京にて。
そうそうたる作家陣(井上ひさしさん欠席)、そうそうたる役者陣。
三谷幸喜さんに「いつも妻がお世話になってます」と挨拶されたり。
記者会見なぞに顔をだしたのは始めてだったので何を言っていいやらあたふたする。
楽しいものになればいいなあ。しかしまだ先の話。

夜は本番までの時間劇場で少し寝てしまった。
今日は舞台以外無口になっていた。わかりやすい。あきらかに疲れている。
一日の間に色々な人に会うのは楽しいがストレスになる。



6月×日

金曜マチネ。

終わってアフタートークなるものに参加。
日本戦真っ最中。
今回の芝居何と闘ってるって、サッカーとだよ。
負けねーぜくそ〜!!



6月×日

土曜マチネソワレ。

今日は舞台同様飲み屋も男優陣天国だった。
tptの山本亮さん、元ショーマの川原和久さん、キャラメルボックスの近江谷さん、佐々木蔵之助君、内田滋啓君などなど。男臭かった。
途中から、ナイロンの新谷真弓、オアシズの大久保佳代子さん、西山水木さんなど、女優陣も合流。少し男臭さもまぎれる。



6月×日

楽日!

思い返せばあっという間の2ヶ月。
はじまりあればおわりが来る。
だから舞台はいいのだろう。
今回は、題材が題材なので、様々な意見があった。
ま、そういう物議を醸し出す舞台を目指してた流山児さんの目論みは上手くいったのではなかろうか!?
まあ、僕自身が何も知らずに観に来る立場だったら、どう思っただろうな〜と。
どんな感想を持ったのだろうかな〜と。
2ヶ月この脚本と向かっている側になると、冷静に良く判らなくなっていたことも事実。
不思議な気持ちで一杯だ。

なにはともあれ千秋楽。
気がつけば体中の筋肉がはっている。
気がつけば腕や足や頭にアザや傷、たんこぶが出来ている。
気がつけば喉がヒリヒリ痛い。
観に来てくれた皆さんありがとう。
共演者の方々楽しかったです。
その他この舞台に関わった皆様にお疲れさまを!

僕は6月後半、海外逃亡しま〜す!
どこに行くかは内緒です。探さないで下さ〜い(笑)
これにて「殺人狂時代日記」完!!!

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